2013年11月2日土曜日

Mitsouko(1919) by Guerlain



1919年フランス。第一次世界大戦のあおりをうけて各地で革命が起こり、ヨーロッパのいくつかの国では帝政が崩壊、一方では新しい国家が誕生していました。そういった混乱の後でラ・バタイユのヒロインであるミツコをモチーフに生み出され、私でさえも「これぞ名香」と自信をもって言えるのがミツコと感じます。ジャック・ゲランの名作です。

ジャック・ゲランご自身が語っておられるように、ミツコは青山みつさんからはインスピレーションを得ていません。幾つかの香水ショップにも堂々と説明書きがありますが、これは誤解なのです。偶然にも、日本からオーストリア=ハンガリー帝国のクーデンホーフ=カレルギー男爵家へ嫁いだ女性がみつさんだったから、ついそう解釈されてしまうのでしょう。でも重ね合わせたい気持ちはすごくよく分かります。また、ジーン・ハーロウの夫ポール・バーンが自死する時にミツコを振りかけたという悲しいエピソードには心打たれました。

初めに試したのはオードトワレだったのですが、トワレはつんとしていて好きになれませんでした。パルファムを最初に試した時はオークモスが規制される前で、インセンス感あふれるスパイス、熟した桃、輪郭のはっきりしたジャスミン、パウダリーなオークモスが絡み合い、奥ゆかしく静けさの中にも強い意思のある凛としたシプレフルーティでした。忘れられません。個人的には最初の感動を思い出すたびに 「オークモスがあってこそのミツコ」と、その心地よさを噛みしめるばかりです。
オークモスやツリーモスは完全に使えなくなったのではなく、アレルギーの原因となるアレルゲンとして規制する方向。香水アレルゲンは接触アレルギーを引き起こす場合があるからだそうですね。複数のメーカーはNo.5やミツコやミス・ディオールが作れなくなると反対しているそうですが...

ゲランブティックで再構成された現行品を試しました。BAさんとも言葉を交わしましたが、若い方にも使いやすくなっていて、これが初めての香りであればこれはこれで良いのかもしれません。キラキラしたハーバルな柑橘系の香りにまとまっておりました。スーツの男性が着けてもフレッシュで良いかもしれません。季節を問わずに着ることができる香りです。

時代の流れと共に合成香料へと置き換えられることを余儀なくされた時、その「歴史的名香」をどうやって続けていくか。調香師さんは日々、受け継がれてきた香りを絶やさぬ努力をされておられるのですね。

追記1:
ヴィンテージのミツコ、写真では分かりませんが、若干液体の色が違う気が。空けたときから深い深いシプレが広がり、肌に乗せてみて違うのは明確。この時のミツコは確かにもっと深くて強い。
現行品のミツコが駄目かと言うとそうではありません。今のミツコは良い意味で敷居が低くなったし、纏いやすくなっています。ミツコはおばあさまの香りというイメージが払拭されたらよいな
と思いました。

追記2:
昨年2015年末、ゲラン香水ブロガーのムッシュ・ゲランさんからの情報によりますと、
「最近製造されたルールブルーとミツコのパルファムとEDPに深刻な嗅覚の欠陥を発見しました。結果として、ゲランのティエリー・ワッサーはそれらを再調整しながら、数ヶ月これら4種の生産と販売を一時停止することを決定しました」との事。生産復活した時にはどう変化しているのか、輝きを取り戻せるのでしょうか?
(この結果が、上述のミツコです)

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