皆さま、こんにちは。久しぶりに香りの話をしてみます、の巻。
日本では4月に出るセルジュ・ルタンスの新作「ラ・フィーユ・ドゥ・ベルラン(ベルリンの少女) La Fille de Berlin」が我が家にやって参りました。かわいいサイズの「L'EAU (ロー)」も付けて頂いて嬉しかったです。紹介ページにはこんな言葉が。
「新作の中に東洋のアクセントを発見-ベルリンへのこの旅行はマラケシュ経由。香りはバラの色がベース。ムスクと琥珀の青々としたドライダウンを明らかにするために、黒コショウと赤いバラのトップノートがゆっくり溶ける」
ルタンスさんは1942年生まれで、自分の幼少時代の困難とオーバーラップするかのように同時代の「A Woman in Berlin」からインスパイアされたらしいです。ベルリン市街戦(1945年4月23日~1945年5月2日)は1945年のこれから本格化するのですが、日本での店頭発売開始日4月21日を合わせたのは単なる偶然でしょうか。
ノンフィクション「A Woman in Berlin」は戦時下のベルリン女性の壮絶な体験記。「征服された都市の8週間」というサブタイトルがついています。本は映画にもなっているのでご覧になってみて頂ければ、ルタンスの伝えたかった世界が分かって来るんじゃないかなと思います。私は3年くらい前に観ました。アントニー・ビーヴァーが伝えたベルリンも読みました。
ソ連と不可侵条約を結んだドイツがバルバロッサ作戦を始めてから独ソ戦は泥沼状態で、その報復として美しかった都市ベルリンは生き地獄と化しました。巻き込まれたのは武器を持たない女性や子供。ゲッベルスがスポルトパラストで総力戦を演説、兵士たちは前線で戦っていて人手が足りないため、HJ、BDM、国民突撃兵が駆り出されました。少年・少女、老人です。敵ソ連軍は容赦のない攻撃を市民にも向けました。
ウェザー・リポートのリーダー、ジョー・ザヴィヌル(ウィーン出身。ウィーン攻勢もちょうどこの時期)は子供の目線から同時期の体験を語っています。
「女の子たちはロシア人に襲われないよう不細工に化粧した。生き残る為に軍人とも仲良くした。彼等は家に無線機をつけてくれたけど信用できなかった。酔っ払いでガソリンを飲んでいる奴もいたんだ」
生き残る為に軍人とも仲良くした―ベルリンの女性たちもそうでした。ノンフィクションは匿名で出版されて、ふしだらだの不謹慎だの言われましたが、生きるためならばどうする? 生き残りさえすれば...そうするしか道はなかったとしたら? 強くなるしかない、強くなければならなかった。フランス人であるルタンスが当時で言えば敵国であったドイツの女性の境遇に共感するというのはなかなかできないこと。(ボキャブラリーに乏しい表現かもしれませんが)素晴らしいことだと思いました。
ベルリン市街戦は物語を書くために調べているのでつい長くなってしましたが「お前暑すぎるって言われるんだよ(修造さん)」て言われそうなのでこの話は終わります(笑)
・・・・・・ってこの話が殆どになってしまいましたけど、厳しい中で強くあらねばならない香りという、ルタンスのコンセプトにスパイシーなローズはぴったりだと思いました。
「ベルリンの女は見ている。香水の赤みがかったピンクと主人公の赤いコートがオーバーラップした」(ルタンス)
香調はフロリエンタル。購入の前にサンプルを実際に肌にのせて試しましたが、香り立ちからスパイスが効いています。バラはバラでもナエマやレッドローズやティーローズ等の、甘かったり青々しかったりキラキラしていたりゴージャスだったりする様な感じではなく、刺すような辛さがあり、重くて乾いているが透明感はある。マゼンタ色のイメージにぴったり。実は男女兼用だったりする。
(蜜のように甘いが甘ったるくないナエマは一番好きなバラの香りです)
fregranticaで「ババくさいベースノートだ」と言っいてる方がいましたが、それも分かる気がする。でも、これは体調によるのかも。私も最初に着けた時は始まりの割に終わりがつまんなく思えました。別の日に試したら、ババくさいのがドライで心地よい香りに感じました。
何かに立ち向かうために厳しく自分を奮い立たせ、且つ自分でありたい時に、この香りを着けると勇気をもらえそうです。
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