2015年3月20日金曜日

Complice Extract and Ean de Toilette(1934/1973) by Coty


コンプリスはコティが調香した1934年から約40年後の1973年に「発掘」された香り。装飾的なラリックのボトルも素晴らしいのですが、オリジナルの香りを分けて頂いて感無量でした。(トワレは持っていました)ドライダウンするとどうなるのでしょうか。※ここからはダンディなオッサンが憑依している為、調子が変化します(オイ)



香りの印象

式典の身支度をしている最中、デコラティブな装飾で縁取られた大きな鏡の前で改めて斜め左からの自分を確認し背筋を伸ばすような凛々しいトップノート。冷たい金属の軸を樹々が包み込むようなシプレーを底辺に感じる。しばらく経ってくるとアルデヒドが顔を出し始める。

パウダリックノートとアイリスには何処か悲壮感が漂う。勝利したのに罪悪感を残した戦争協力者のようである。スーッと伸びていながらしっかりと香るフローラルが美しい。花はそこに「有る」のに去らねばならぬと分かっているような、謎。

1934年は長い2つの大戦の小休止であった。キュビスム、ヴァイマール、バウハウス、日本では「もはや戦後ではない」とされた1956年よりも発売は後だが、1970年代も戦いは絶えなかった。実戦というよりも「冷たい戦い」をめぐる世界情勢は早朝の曇り空のようだった。

時間が経って柔らかく優しくなった。このフルーティさはピーチだったのか、私の肌では前に出てくる。全体的に優しい紫色の印象、ライラックが入っている?このパウダリックノートが浮き足立っていないのはムスクとウッディとオークモスが足元を固めているからか。

Compliceとは「共犯者」。「愛の罪人」というキャッチフレーズのような謳い文句が当時流れた。通りで、近づこうとすると離れていく訳だ。今は亡きコティを追い求めるのは、亡国の二重帝国を想う気持ちに似ている。

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